台湾旅行。
それは最高の旅行である。
今日も二か月の労働の末、台湾旅行をねじりこむ隙間を見つけた。
すかさず休み申請し、1ヶ月前から10本の手の指を折り数えていた。
普段の生活で糖質制限をするのも、異国の料理を堪能するためといっても過言ではない。
ただ今回、以前の台湾旅行の反省が生きていない。
前回、同伴人のサポート無しで自分の食べたい料理を伝える事が出来ず、数多くの素敵な食べ物を逃してしまった。
しかし今回もまた、前回から語学力は向上していない。
まあ現地の優しい台湾人の方に、メニューを指さし、にっこりすれば食べたい意思は伝わるだろう。
よし、今回は「指さしにっこりオーダー」を武器に旅立とう。
素敵な人々と料理に出会えますように。
出発当日。成田空港に到着だ。
あまりの混雑ぶりに、逆に期待感がモリモリだ。
みんな台湾に行きたいのだ。分かるよその気持ち。
心の中で「一緒に美味しいもの食べようね」的な旨を伝え、大人しく列に並ぶ。
しかしよく考えてみれば、私の飛行機は4時間も先だ。
おそらくこの方々達は、一足先に台湾の地を踏むのだ。
なんだか裏切られた気分だ。
いきなり失敗した。
美味しい機内食や美人のスッチー、映画などに気を取られ、全く写真を撮っていない。
写真好きとしては痛恨だ。
しかし友人に以前「おんなじ写真に見えるから撮らなくていいよ」と言われたことが、逆に心を軽くしてくれた。
有難う友人。
君のおかげで気分よく台湾に到着できた。
さあ、ここから怒涛の反糖質制限ライフが始まる。
大田胃酸をたくさん持ってきてよかった。
早速、現地の数少ない友人に、台湾初日をセレブレイトとしてくれるご飯屋さんに案内してもらう。
お店の名前はルーチャオ。
「熱炒」という名前から想像するに、美味しくないはずがないお店だ。
しかし「熱炒」はどうやらお店の名前ではなく、台湾の庶民的な飲み屋さんの総称らしい。
格安で現地の食べ物が食べられると言う、最高のキャッチコピーにも惹かれた。
「ルーチャオ!ルーチャオ!」とテンションを上げる私の発音を否定しつつ、台湾の友人もとても楽しそうだ。
どうやら現地の人もルーチャオは最高に楽しいらしい。
相手も楽しい食事程、楽しいものはない。
ルンルン気分でタクシーに乗り込み、おすすめのルーチャオに向かった。
こ、ここがルーチャオか。
何という熱気。何という活気。
そしてニンニクと炒め物の香り、最高に美味しい店であることがビンビン伝わってくる。
既に現地の方々が集結している。
最高だ。こういう熱気のある店で食べられることだけで満足だ。
友人曰く、みな仕事帰りに食事をするらしい。
簡易的なイスとテーブルだが、それもまた現地感たっぷりだ。
日本の野外の焼き鳥屋さんを彷彿とさせる。
一人、顎が外れそうなほど爆笑している女性がいる。
気になりすぎるが、今は顎が外れそうな女性よりもルーチャオだ。
さあ沢山食べよう。
友人の流暢な中国語のおかげで無事メニューをゲットできた。
どうやら書き込み式のメニューの様だ。
な、なんという種類。
出来れば全部食べたいんだけど…と言う私の発言を、友人は笑顔で回避してくれた。
まだ初日だ…焦らず楽しもう。
自分を納得させメニューと向き合った。
当然ながら一切読めない。
しかし友人は現地感を楽しませたい、という優しい心遣いから全く教えてくれない。
漢字なのがせめてもの救いだ。
魚と書いているのに蛇が出てくることはないだろう。…多分。
しかし激安だ。
100元といえば、当日のレートは3.4だったため、約340円だ。
これは鳥貴族より安い。
台湾のルーチャオが日本に攻め込んで来たら、鳥貴族は全力で戦わなければならないだろう。
しかしこの指みたいなのは何だろう。
おそらく「おすすめ」で間違いない。
店長が親指を指して料理の温度を確認していますよ!と、いう意味ではないはずだ。
このお勧めマークを参考に選ぶことにした。
「雉」みたいな漢字は鶏肉な気がする。
「大腸」はホルモンだろう。
公文式行ってて良かった。
楽しく選んでいると、友人が奥からビールを持ってきてくれた。
台湾ビール!!最高に嬉しい。
ビールは「ピージョ」と呼ばれ、この台湾ピージョは現地の人たちにも最高に愛されている。
お値段は一本当たり60元。約200円だ。
飲みやにもかかわらずこのお値段、「激安酒場一休」と変わらない値段だ。
しかもどうやらこの「18days」の刻印が入っているビールは、日本でのえびすビール的な扱いらしい。
瓶に詰めてから18日以内に召し上がって欲しい、という何ともこだわりのビールだ。
それが200円。破格と言わざるを得ない。
もちろん味は最高だ。
非常に飲みやすく、日本のビールよりも軽い。
チンタオビールに似てるのも立地的に当然なのだろうか。
この小さなコップが台湾感を引き立てる。
どうやら台湾のスーパーでも売っているらしく、友人に最終日にお土産として購入したい旨を熱く語る。
これを都内の私の狭い部屋で飲むのだ。
台湾を思い出すことができるだろう。
ピージョを楽しんでいると、即座に料理が運ばれてきた。
もうピージョへのテンションで何を頼んだのか忘れてしまった。
値段は100元(約340円)で、牛肉の表記があったのは覚えている。
とにかくおいしそう、そしてとてつもないニンニクの量だ。
香りも抜群だ。中華鍋で一気に炒めたに違いない。
さすが熱炒だ。
一口食べると、もう最高に旨い。
しょうゆベースで野菜の甘さが引き立っている。
そして牛肉にもしっかりと下味がついており、これだけで主役級の旨さだ。
土曜日の夕飯でこれが食卓に出てくる家庭を持ちたい。
ネギ、玉ねぎ、唐辛子、ニンニク、牛肉。
良く考えると、間違いないやつらばかりだ。
次に羊串だ。80元(約280円)で二串と少しお値段が張る。
前回の台湾旅行で最高にはまった羊串を見つけたため、即注文してしまった。
これに関しては、屋台の羊串の方がジューシーで美味しいかもしれない。
十分美味しいのだが、クミンの量に遠慮が見られる。
私がお師匠様だったら「遠慮はいりませんよ?」とクミンに説教の一つでもしたいところだ。
これはエビのすり身団子的な奴だ。(〇蝦巻だったと思う)
150元(約510円)で高いと感じる当たり、台湾の食事に慣れてきた証拠かもしれない。
揚げたてで届くこの料理、チリソース的なものにつけて頂く。
まさに驚異的な旨さだ。
子供の誕生日会でこれを出そうものなら、音速で無くなるだろう。
そしてその日の夜には、レシピを尋ねる電話が殺到するだろう。
味ももちろんのこと、最高に食感が良く、タレとの相性が良すぎる。
揚げたてだからこそ、というのは納得できるが、それにしてもうまい。
断面にはプリプリプリのエビがぎっしり詰まっている。
完全に焦点がぼやけているが、これはピージョのせいかもしれない。
悩殺断面図を後日楽しむために撮ったのだが、これは逆にモザイク的で興奮するかもしれない。
さあどんどんくるぞ。
これは100元(約340円)の〇〇炒麺的だ。
名前は忘れたが、とてつもない海鮮だ。海鮮何チャラ麺だと思う。
この太麺が最高にたれに絡み、間から海鮮が顔をのぞかせる。
牡蠣、イカ、エビ、時々空芯菜。
これだけでも十分満足できる旨さだ。
濃厚なたれが極悪なほど麺と絡む。
プロフェッショナルおデブさんならば、躊躇なくご飯を頼むだろう。
しかしご安心頂きたい。
台湾は基本白飯は無料なのだ。
近くに炊飯器がおかれ、好きなだけ食べることが出来る。
糖質制限とは程遠いが、旅行の時は一時休戦だ。
お米は若干日本のお米よりぱさぱさ感はあるが、十分美味しい。
炊き立てじゃないからかもしれない。
これを先ほどのたれに絡めて食べたのは、私だけの秘密だ。
も、もう止まらない。
最高に楽しく、最高に美味しい。
2メートル隣でタクシーがかっ飛ばしている事なんか忘れてしまう。
足元でわんちゃんが寝ている事もお構いなしだ。
笑顔で話しかけてくれる台湾人。
美味しい食事。あふれる活気。周囲の笑い声。
素晴らしいスタートダッシュを切れたことを感謝したい。
さあ明日の朝の口に備えてリステリンを買いに行こう。